ゆっけ&ぷくのお絵かき日記。

音楽&イラストサークル、Y-NRG SYSTEMのブログ

HD音源(ハイレゾ音源)は本当に音が良いのか

 
まず結論から。

ではこれらについて、何故なのかを説明していきます。
 

1.ハイレゾハイレゾリューション)音源とは?

(形式についてややこしいことが書いてあるだけのでこの節は飛ばして読んでもOKです)
これまでのデジタル音楽は、CD音質、つまり44.1kHz 16bitが標準でした(ちなみにCDが出来て少し後に現れたDATというデジタル音楽用カセットテープは48kHz 16bit)。
最近盛り上がりを見せているハイレゾ音源とは、上記CDよりも高周波数・高ビット深度で音楽をデジタル標本化(サンプリング)した音源のことです。
これらはCDと同じくPCMという方式で記録されていますが、CDより解像度が高いので原音に近い状態で記録できるのです。
実際には192kHz 32bitや96kHz 24bit等、配信されている曲によって色々とデータ量は違うようです。
場合によってはSACDと同等か高サンプリング周波数のDSD形式で配信されている曲もあります(DSDは、例えばSACDだと2822.4kHz 1bitで、PCMとは違う方式で記録されています)。
 
これらのサンプリング周波数・サンプリングビット深度が大きければ大きいほど高音質と言われていますが、同時にデータ量も大きくなります。
CDだと1秒間に44.1キロヘルツ×16ビット=705.6キロビット=88200バイトのデータ量となります。
ハイレゾだと、例えば48キロヘルツ×24ビット=1152キロビット=144000バイトのデータ量となります。
これでも実に1.63倍以上のデータ量です。192kHz 32bitならば、CDの約8.7倍程のデータ量にまでなります。
ただ、これは飽くまでデータ量の話で、実際の表現力は、16bitで65536段階、24bitで16777216段階なので
CD... 44.1キロヘルツ×65536=2890137600
HD... 48キロヘルツ×16777216=805306368
よって、278倍の表現力……と宣伝されることも有ります。(こんなふうに http://www.oricon.co.jp/news/81517/
192kHz 32bitだとCDの実に28万倍以上って言うことですね……
飽くまで同形式(この場合PCM同士)で比較した場合ですので注意です。DSDなんかは比較できません。
 
あ、でも音質は何倍って言って比較できるものではないので注意です。飽くまでも表現可能な能力が何倍である、という意味に留まります。
 

2.ハイレゾ音源とCDの違いを、人間が聞き分けられるのか

ここからが本題です。
よく、CDは聴覚上十分に高音質で、ハイレゾ音源であっても聴覚上の違いはないのではないか、という意見を耳にします。
その根拠は以下のように説明されることが多いと思います
(1)CDの44.1kHzの標本化周波数では、22.05kHz迄の音を記録できる。聴覚上の限界は、耳がよほど良くても20kHz程度なのでそれ以上は無意味である
(2)CDの16bitの標本化ビット深度では、65536段階のダイナミックレンジ(約96dB)を表現できる。聴覚上聞き取る事が不可能な小さな音も再現できる為、それ以上は無意味である
 
聞いた話では、これらがCDを規格化する時の根拠になっていて、規格化当時は「だから高音質である」と説明されたらしいです。
ただ実際には、見落としなのかそれとも見て見ぬふりをしたのか、いろいろな理由で音質全体に影響を与えていました。
 
まず(1)について。
たしかに44.1kHzで標本化すれば、22.05Khzまでの音程を記録できますが、これはPCM方式が記録限界に近づけば近づくほど波形が歪むことを考慮していない説明です。
特に20kHz付近以上だとモアレが出て変なうねりを発する可能性もありますし、限界近くだと矩形波としてしか記録できません。
ただほぼ聞こえない高音域であるのと、音楽的には音程のない音が占める領域なので問題にはなりませんでした。
殆どの人の可聴域はせいぜい16〜17kHzが限界で、殆ど聞こえない部分です(耳が良くて聞こえたとしても他周波数帯に比べて小さくしか聞こえません)。
 
では、十分可聴域である、ピアノの一番高い音程(4.186kHz)で、どのくらいの違いがあるでしょうか。
わかりやすくサイン波で波形を描いてみました。

図を見れば明らかなように、44.1Khzだと随分歪んでいます。実際にはDAコンバータによって丸められたりするのですが、聴覚上影響が出ないとはとても言えないような波形です。
ちなみにシンバルやスネアドラム等の一部の打楽器は、ピアノよりもずっと高音域の成分が多いので、波形はもっともっと歪むことになります。
また、低い音であっても楽器によってはもっと複雑な波形になるため、44.1kHzでの再現度はより低くなっていきます。
 
実際にハイレゾ音源配信サイトにて音楽ファイルを購入し、96kHzで再生した場合と44.1kHzで再生した場合を聴き比べてみました。
その結果、シンバル等の金物の音が、96kHzの場合は自然に聞こえ、44.1kHzだと音程が薄くなり、ホワイトノイズのように均一な雑音に聞こえました。
言葉で説明するのは難しいのですが、44.1kHzだと不自然な硬さのある、ざらざらした音に聞こえます。
 
次に(2)について。
確かに16bitもあれば量子化ノイズも全く聞こえません。ただ、低い音程になればなるほど、時間的な不自然さが波形に現れます。
これは図にすることは出来なかったのですが、量子化ビット深度が16bitだと同じ音程が続くような波形ができてしまいます。
これが量子化ノイズの原因なんですが、16bitだとそのノイズ自体は聞こえません。
しかし、元の波形に影響を及ぼしてしまっているのは確かなのです。
 
先程の例で購入したハイレゾ音源を32bitと16bitで聴き比べてみると、ハイレゾで再生した時のほうが低音の厚みが増してハッキリとした音になりました。
 
更に言うと、特にクラシックやライブ音源だと顕著のようですが、曲中に小音量の音が紛れていたり、演奏途中に音量が小さくなる場合、CD音質だと実質16bitあるうちの例えば13〜14bitしか使われない(ノーマライズされていない)事になってしまったりするわけですが、ハイレゾならばそれでも十分カバーできるのはお分かり頂けると思います。
よく、空気感が云々と言われたりするものの一つはこれだと思います。
 

3.結局、ハイレゾ音源は購入するだけの価値が有るのか

ここまでは前置き。
というかここからがホントの本題です。

ぶっちゃけて言えば、量子化が高解像度になったことによる音質向上なんて、そこそこのスピーカー・ヘッドホンを持ってないとわかりません。
音質の観点からすると、そんなことは些細な違いでしか無いのです。
(もちろん良い再生環境を持っているなら高解像度で量子化した音源のほうが満足度は高いですが、それ以上に大事な違いがあるということです)
 

では何が一番違うのか。

それは、マスタリングの違いです。
CDって言うのは、ラジオやテレビで放送された時に、如何に大きな音で聞こえるかを重視してマスタリングしてます。
全部がそうではないですけども、殆どそうです。音圧戦争とか言われてます。
16bitって言えば65536段階のダイナミクスが表現できるはずですが、でかい音で鳴らしたいばかりに殆どピーク付近の音量でマスタリングされるわけです。
そんなんで本当に表現したいものが表現できているわけがありません。
高音質を謳うCDですら、他のCDとの極端な音量差を嫌うためか(言うなれば、"音圧戦争につられて")ダイナミクスを多少犠牲にしている様に思えます。
 
その反面、ハイレゾ音源は高音質を求める人が購入するものです。
だからマスタリングもスタジオの音そのままとか、それかハイレゾ配信用に別マスタリングしたりします。
CDより音量は小さくなりますが、その分音質が全然違います。
ハイレゾの再生環境がなくても、44.1kHzの16bitに変換すればCDより高音質で聞けるわけです。
しかも、ハイレゾだからと言って特に高価なわけでもありません。曲にもよりますが、CDより安い曲なんかもちらほら……
(ただ、CDマスタリング音源をアップサンプリングしてるハイレゾ音源もあるので、そういうのはマスタリングの違いを実感できなさそうです……)
 
そんなわけで、ハイレゾ音源は購入するだけの価値があると結論付けることが出来ます。
  
ところで、さっき話に出てきた私の購入したハイレゾ音源は、実はCD版も持ってました。
ジャズなので結構音質はこだわって作ってるCDだと思うのですが……それでもマスタリングの時点でぜんぜん違うことに驚愕しました。
iPodで聞いてもイントロの最初の音(開始1秒)でわかるくらい全然違います。
 
この違いはmp3やAACなどの圧縮音源にしても分かるほどの違いなので、気になる人はe-onkyoiTunesで同じ曲を試聴して比べてみて下さい。
ラブライブ!とかもあるのでCD持ってる人はCDと比べて見てもいいかも(’’
 
ちなみにiPod touchiPhoneは48kHzの24bitまで対応してるので、ハイレゾ対応の再生アプリを入れれば高音質で音楽を楽しめますよ!
もちろんそこそこのイヤホンやヘッドホンが必要になりますが……。
私のお気に入りはONKYO HF Playerというアプリで、CDをリッピングした音源も48kHz 24bitへアップサンプリングしてくれる機能がとても良いです。低音がシッカリします。